びばい人物語 #001 渡辺修さん

観光とは、地域活性化の一手段。観光が美唄へ「結び」つけるものとは

かつて炭鉱で栄え、炭都のまちとして全国に知れた美唄市は、北海道空知地方のほぼ中央に位置する人口約2万人ほどの小さなまち。
そんな美唄市には歴史と人が築き上げてきた文化や食など、多くのものが残り続けています。
「先人たちの残したものを掘り起こしていきたい」と話すのは、“美唄観光物産協会”会長の渡辺さん。
美唄観光物産協会は、観光振興と産業発展により郷土愛の醸成と市民生活向上を目的に1988年に設立されました。
現在は、130を超える会員を有し、会員をはじめ行政や市内関係団体と連携を図り、魅力ある地域づくりのため、3大イベントの主催や観光振興、物産振興のほか、各種SNSを活用した情報発信にも力を入れています。
1996年から理事を務めた経験と、会長が描く未来への展望。美唄市における観光の“いま”と“これから”について思いを伺いました。

あれもこれもではなく、あれかこれか

現在、日本の観光は内外を通じて活性化の道を歩んでいるなかで、美唄市も観光によるまちづくりを積極的に取り組んでいます。
インバウンド観光客誘致のプロモーションや、サイクルツーリズム・スポーツツーリズムといったアクティビティなど、美唄観光物産協会もそれらに協力をさせていただいています。
「限られた資源で活動しているわけですから、エネルギーを集約した形をとらないと絶対にダメだと思っています。」と話します。インバウンドも自転車もスポーツツーリズムも、いずれも観光のツールでしかなく、そのツールを組み立てるものが必要で、何を優先するのか・何から取り組んでいくのかがとても重要なことではないかと会長は話します。
「思い付きでは物ごとの段取りはとれません。明確な指針が示され、そこから具体的な動きが出て着うるもの。あれかこれかでなければならないと常々考えています。」

明確な目標と優先順位が決まっていても、アクションを起こす各団体や行政の方向性がバラバラであっては決して良いものは生まれません。
今は競争の時代、観光においても自治体間の競争であり、何事にも戦略の組み立てが大切です。そうしなければ、ほかの自治体に負けてしまいます。
「視察研修で道北の名寄市と中川町を尋ねました。資源・人材・お金などの限られたものを最大限に活用して必死に活動していました。改めて、専従者・情報の共有・人を巻き込むことの大切さを思い知らされ、ある部分では悔しさもありました。」と語る渡辺会長。
「力を一つにして、“オールびばい”の取り組みをやるべきです。」

モノマネではなく、ホンモノを

「今まで無かった“もの”や“こと”を、あそこでやっているからと真似てしまうと、最後は資本競争に巻き込まれてしまいます。」
参考にすることは決して悪いことでありませんが、ただのモノマネでは絶対にいけない、らしさを追求し“bibai color”がなければいけないと話す渡辺会長。
ホンモノとは一体どんなものなのか、話してくれました。

美唄観光物産協会が主催で行っているイベントは年3回、春の“びばいさくら”、夏の“びばい歌舞裸まつり”、冬の“雪んこまつり”です。
例えば、毎年5月に開催される“びばいさくら”は、名称のとおり桜を主としたイベントですが、桜の名所で日本最北のソメイヨシノ群生地としても知られる東明公園を会場に、例年多くの方が来場してくれます。
特徴的なのが、市内はもちろんですが市外・道外・海外からの来場が増えているということ。そこには美唄の桜が持つ可能性と力を感じることができます。

炭鉱が盛んだった時代に活躍していた旧東明駅は、施設の維持のために地域の方々が一生懸命頑張っています。
そこには、歴史が残した遺産(駅舎・SL)とともに、人と地域の熱意があります。

桜は日本各地に点在していますが、美唄でしか出せない価値がもっとあるはず。地域の人たちが大事に受け継いでいるものは、そこでしか出会えないものです。
「モノマネではなく、それらを踏まえて加工し、美唄らしいものとして考える。それを自分たちのものにしアウトプットできるか、そんなことを考えています。」

今あるものを活かし、結んで集中させること

先ほどお話した東明公園もそうですが、美唄にはまだまだ多くの施設や遺産があります。
キャンプ場やスキー場、サイクリングロードや旧美唄工業高校の体育館を利用した体育センターなどです。
特に体育センターは、もともとあった道内屈指のリードクライミングウォールや新設されたボルダリングなどが充実しており、市内の公共施設で唯一の利用者数が右肩上がりです。
このように、もともとあるものの価値を高めることが大事であり、もう一つの代表的な施設が“アルテピアッツァ美唄”ではないでしょうか。炭鉱の歴史が生んだ遺産に、“安田侃”氏の芸術が融合し美唄を代表する施設となりました。
そんな中で、キャンプ場やスキー場、サイクリングロードの老朽化や東明公園の桜の老木など手を加えていかなければいけないものも多々あります。
ですが、新しいものを一から築くのではなく、既存のものを活用し価値を見出すことこそ大事なのではないでしょうか。

会長は「新しい“こと”や“もの”を取り入れることも大事ですが、今ある“もの”を見つめ直し再活用することはもっと大切だと思っています。」とおっしゃっていました。
美唄のいろんな物事に関わる人やものを一か所で結ぶことで、関わるみんなが活性され、その熱はどんどん周りに広がっていくと思います。
今まで観光に興味がなかった人や、観光とは程遠いと思っていたモノも、何が地域のためになり、どこへ繋がっていくのかはまだまだ未知数です。
一手段であるツールの質を高めて、美唄の活性化へ繋がっていけるよう現在観光に関わっている我々は考えていかなければいけないと、渡辺会長の取材を通して改めて思いました。


≪ Profile ≫
渡辺 修(60歳)
美唄観光物産協会 会長
㈱ワタナベエキスプレスコーポレーション 会長
つぼ八美唄店 公式HP

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