びばい人物語 #003 気ままな主婦の会

主婦のアイデアと行動力が生んだ、新たな価値

例年になく降雪が遅れた北海道も12月に入りようやく本格的な冬が訪れ、美唄の景色も白銀に広がります。
そんな時期に作り出すのが寒仕込みの味噌。その現場へ向かい、加工場に近づいていくにつれて元気な笑い声が聞こえてきます。
作業着の上に白衣と帽子とマスク姿で味噌作りに励むのが今回ご紹介する“気ままな主婦の会”の皆さんです。
メンバー全員農家の主婦たちが集まったグループで、普段は農業や主婦業をする傍ら、自分たちで生産した愛情たっぷりの地元産品の商品開発を、自分たちの思うままに取り組んでいます。
「冗談ばっかり言っているから15年ちかくも続けてやってこれたよね」と話すメンバーの皆さんは、何といってもいつも明るく元気いっぱい。その元気の秘訣とこれまでの経験や今後の話を、今回の味噌作りの現場で伺ってきました。

“もったいない”から立ち上がった

美唄市峰延町は美唄の南西にある農村地区で、国道12号線と樺戸道路(峰樺道路)が繋がる町。JAみねのぶは産業組合から通算して100年以上の歴史があります。
そんな峰延町の農家の主婦6名が平成16年に発足させたのが気ままな主婦の会で、会の名称は代表の前川さんが当時使用していた携帯のメールアドレス「kimamanashufu」をメンバーが気に入りつけられたそうで、メンバー6名が発足から1人も欠けることなく現在まで活動されています。

発足のきっかけは、当時水田の休耕(休耕田)対策に大豆の作付けが始まったこと。その大豆は60㎏毎に買い上げられ、規定を下回る量の大豆はかなり安く叩かれてしまう。
「せっかく一生懸命作っても、量が足りないだけで安くされてしまうのは本当にもったいなかった」
そこで立ち上がった主婦6名は、付加価値を付けて商品の価値を上げてみてはどうかと考え、ヒントになったのが当時流行っていた「発芽玄米」。
専門家の意見なども参考に、試行錯誤を重ね完成したのが“発芽大豆”でした。
原材料の生産から加工を行い、催事などにも積極的に参加することでいろんな方に峰延の大豆を広めていった主婦たちは、今回の取材時に作っていた“無添加味噌”やその味噌で作った“食卓のタレ”など次々に商品を開発していきます。

「扱っている商品は賞味期限が短いものばかり、添加物を使っていない証拠だけど、ロスが多く大変な時もありました」と話す前川代表。
美唄の食品製造会社「創味フーズ」さんとコラボして、賞味期限を少し伸ばす工夫も行っています。
現在も新商品の開発は続けており、原材料から味や見た目など主婦目線で細かい部分までチェックしながら新たな可能性を模索しています。

それぞれの目線でこだわったものを

農家だからこそ、主婦だからこそ、女性だからこそできることってありますかと問いかけてみると、「お父さんより強いってこと?」そういうと「そうそう」と笑いながら話してくれました。
そんな冗談も交えつつ、やはりこの問いの一番の答えは、商品の農産品はすべて自分たちが栽培していること。
丹精込めて育てたお米や野菜は間違いなく安全で美味しいし、そんな商品をたくさんの人達に届くよう、価格やパッケージは主婦や女性の目線で、手に取りやすい商品を目指しています。

会の今後のお話を伺ってみると、「みんなの長生きかな」と笑って話していました。
本当は次の世代がいてくれたら嬉しいが、誰かに続けてもらうものではなく自分たちが始めたことで本業の農家と主婦の合間にしていること、これからもメンバー仲良く続けていきたいそうです。

皆さんのお話を聞いていたり、雑談の中に混ぜてもらうといつの間にか笑顔になり、笑い声が絶えない取材になりました。
これからもずっと笑いが絶えない“気ままな主婦の会”は、きっと皆さんにも美味しい笑顔を届けてくれると思います。
最後に、取材の中で印象に残ったとても“らしい”コメントを。

「私たちの賞味期限はまだ切れてないよ。トマトも完熟が一番おいしいんだから。」


≪ Profile ≫
気ままな主婦の会
美唄市峰延町の農家で主婦の6名
平成18年「美唄市はつらつ農業大賞」受賞

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